高校の同級生と結婚することになったのが、今から10年前だった。彼の実家は農家で、義父母と一緒に暮らすことになったのだが、駅の近くにある私の実家に比べて、駅からバスで30分の山のふもとにある彼の実家は、昆虫天国である。虫の苦手な私は、それはもう恐怖な毎日だった。特に夜中にトイレに行くと、トイレの明かりにたくさんの虫がたかっているのが恐ろしくて、前の晩の水分を控えるようになったほどだ。優しい夫がいなければきっと私はとっくに逃げ出していたと思う。そんな私も子供を3人産むと少しは図太くなり、ちょっとやそっとの虫では驚かなくなったけれど、それでもやっぱり今でもゴキブリ、蜘蛛、ハチは苦手だ。

特にスズメバチは気持ち悪いとか生理的な理由ではなく、実際に子供を危険から守らなくてはならないので、必然と気をつけるようになる。うちは広いせいか巣を作りやすいらしく、もうすでに2回スズメバチに巣を作られてしまっている。そのたびに白い防護服を着た業者さんに撤去してもらうのを、私たち家族は完全に施錠された家の中から眺めていた。テレビでもたまに見るけれど、間近で見るとハチのブンブン飛ぶ音や、カチカチという威嚇する音が聞こえ、結構ドキドキする。だいたいスズメバチを除去するのにかかる時間は30分から1時間ほどなのだが、いつもあっという間に時間が過ぎてしまう。スズメバチの巣の除去はいつも命がけで、こちらもハラハラしてしまうのだけど、除去が終わると何だかものすごいショーを見た様な気持ちになるのが不思議だ。

とは言え、もう家に巣を作られるのは勘弁である。毎年春先になると、私たち家族は巣を作られていないかと念入りにチェックするのが恒例となっているが、もうこれからはできたら巣を作らないでほしいな…と願わずにはいられない。